10月のある日のことです。
その日は体育会の練習があって、終わったときにはもう薄暗くなっていました。
けれど、まだ委員会の仕事も残っていたんです。
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D君と話し合った結果、片付けてから帰ろうということになり、わたしたちはしーんとした校舎で二人で仕事していました。
校舎が閉まるまでには、まだ1時間半くらいはあるはずです。
例によって、D君の腕が動くたび、伸びをするたび、わたしは内心ドキドキしていました。
ドキドキと言っても、それは胸の痛みも伴ったものでしたが。
作業に意識を戻そうと、わたしが彼から視線を切ったときです。
急に、ザーッという、ノイズのような激しい音がしました。
窓を見ると、真っ暗ななかにかすかに、でもすごい勢いで雨のしずくが落ちていくのがわかりました。
いきなりの土砂降り。
このところ天気が変わりやすくなっていたのが災いしたんです。
「失敗したな…」
「うん、今日は辞めといた方がよかったかもね…」
「どうする、すぐ帰るか?」
「校舎が閉まるまでは様子を見た方がいいんじゃないかな」
「そうだな、まだ時間あるし」
横殴りの雨です。
これでは、傘をさしたとしてもずぶ濡れになるのは間違いありませんでした。
それなら、このまま帰り道を進むよりも、少し遅くなっても待った方がマシです。
1時間半もあれば、多少は勢いも弱まるでしょう。
雨に気を取られたのが災いして、作業は進まなくなりました。
体育会の練習の疲れもあって、わたしたちは少し気だるい気分で向かい合っていました。
いつの間にか校舎には人の気配も感じられなくなっています。
警備員さんを除けば、もしかしたらわたしたちしか残っていないのかもしれません。
雨は心配でしたが、もうすこしすれば彼と一緒に学校を出ることになる。
それを内心楽しみにしながら、ふとわたしは、今の状況を思い返しました。
今、もし本当に警備員さんしかいないなら、この部屋は密室のようなものなんじゃないか。
いえ、もしいたとしても、この部屋は校舎の隅っこな上、近くにあるのは空き教室ばかりですから、委員会関係者以外がやってくることはほとんどありません。
そして、今日は他の委員会の人たちはもう帰っているはずなのです。
この時間に、わたしたち2人しか部屋にいない以上、それは確実でした。
急に動悸がはげしくなりました。
絶好の機会がやってきたことに、わたしは気が付いたんです。
とはいえ、いざそう思うと、わたしは声をかけられなくなってしまったんです。
彼の方をちらちらとは見てタイミングを計るのですが、そのたびに身体が固まったように動かなくなって、どうしても行動にうつせません。
さすがに挙動不審だったんでしょう。
それを数回繰り返したところで、D君の方から声をかけてきました。
「どうした?」
「あ、あ…その…」
こんなに焦るなんて思いもよりませんでした。
あまりに焦り過ぎたわたしの頭には、どう誘惑するかなんて考える余裕は残っていませんでした。
無理矢理に絞り出した言葉は、自分でも予想外のものでした。
「わ、わ…わたしと、つ、付き合って下さいっ!」
口をついて出た言葉に、わたし自身呆然としました。
さっきまで、身体の関係を持つことしか考えていなかったのに。
普通に告白することなんて、もう捨てていたのに。
緊張しすぎて、本当の願いを思わず口にしてしまったんです。
「…ごめん」
もちろん、その返事が返ってくることはわかっていました。
「俺、ちゃんと付き合うって、生理的に駄目なんだよ。なんとなくはわかってると思うけど」
「…そうだよね…」
「俺のことそういう風に思ってくれてたのは嬉しいけどさ。そういうわけだから。悪い」
「だ、だったら、あの…!」
「ん?」
「い、一度だけでいいから!身体だけでいいからっ!」
一度思い切ってしまうと、堰を切ったように言葉が出ました。
わたしはもう一つの、いわば妥協案も、流れにまかせて彼に告げました。
「…ホントごめん。俺、そういう目でお前のこと見れない」
その返事を聞いたときには、足元が崩れるような気がしました。
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「な、なんで…D君、女の子、好きなんでしょ…」
「俺も見境なしってわけじゃないって…相手を見てはいるからさ」
「わ、わたし、そんなに、ダメかな…」
「そういう意味じゃないって…!」
「あ…」
彼は何か続けようとしましたが、そこで言葉を詰まらせました。
それに、わたしはもう、これ以上彼の言葉を聞いていられませんでした。
足がガクガク震えました。
わたしにとっての最大限の妥協案さえ断られたんです。
最後の望みが断ち切られた気分でした。
「あ…あ…」
限界だったんだと思います。
わたしはうめき声を上げながら、我を忘れて立ち上がったんです。
彼がぎょっとした顔で、わたしを見ていました。
わたし自身、何をしようかとか、はっきり考えていたわけではありません。
ただ、実際にやったことは単純なことでした。
わたしは彼に駆け寄ろうとしたんです。
もちろん、駆け寄ってどうにかなるものでもありません。
多分それは追い詰められたわたしの、ほとんど本能的な反応だったんじゃないかと思います。
立ち上がった勢いのまま、わたしは机を回り込み、彼に向かって走ろうとして、そのまま転びました。
あんまり気が急いて、足がもつれたんです。
反射的に腕で身体は守ったものの、わたしはそのまま起き上がれませんでした。
みじめ過ぎました。
床にぶつけた腕の痛みまでがわたしをバカにしているように思えて、自分がすごく滑稽に思えてきました。
それで、わたしは床に突っ伏したまま、泣き出してしまったんです。
大声で泣いた気もしますが、記憶が朧で、よく覚えていません。
記憶がハッキリしているのは、ようやく泣き止んだわたしに、D君が声をかけてきたところからです。
「…わかった」
彼の声は、あきらめたような声色でした。
「え…?」
わたしがかろうじて顔を上げると、目の前に困り果てた顔をしてわたしに向かってしゃがみこんでいるD君の姿がありました。
予想外に至近距離で見た彼の姿に、わたしの心拍数は跳ね上がりました。
「俺の自業自得だしな…1回だけだぞ」
「えっ…いいの…?してくれるの…?」
「ただな、本当にいいのか?何しようとしてるかわかってる?」
「…」
「このままヤっちゃったら、もう今までみたいな感じで付き合うの、多分無理だぞ?」
「えっ…なんで…?」
「お前そういうタイプだろうから。そういうカンはいいんだ、俺。だから今まで手を出さなかったんだよ」
「…どういうこと…?」
「お前、好みなんだよ…顔も性格も。だから逆に誘えなかった。俺が遊んでいい相手じゃないって思えてさ…ヤるだけの関係にしたくなかったんだよ」
彼はすこし言いづらそうでしたが、わたしとしてはひとつだけ報われた気がしました。
「…そうなんだ…」
「で、どうするんだ?ここで止めてもいい…」
「…止めないで」
「…」
「やっぱり、このまましてほしい」
今度は、迷いなく言えました。
彼がああ言う以上、わたしたちの関係が変わってしまうのはほぼ確実でしょう。
それはすごく残念だったし、彼にも申し訳なく思いました。
でも、それを引き換えにしても、わたしを好みと言ってくれた彼と、一度だけでも男女としての思い出を作りたかったんです。
彼の深いため息が聞こえました。
わたしは、委員会室の床に横たわったままでした。
ただ、さっきとは違って、仰向けで。
足元に、D君が立っています。
「脚、開いて」
彼の短い言葉に従って、わたしはぎこちない動きで、両足の間隔を空けていきました。
不思議と、恥ずかしいという気持ちは湧きませんでした。
ただ、嬉しさと諦めと、これからすることへの緊張がまじりあった、複雑な気持ちでした。
脚を開くにつれ、制服のスカートの格子柄が乱れ、徐々にまくれていきます。
D君にはわたしの脚や股間は、どんな風に見えているんだろう。
興奮してくれるかな。
初体験への不安さえ忘れて、わたしはそんなことを考えていました。
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カテゴリ:女学生エロ体験談(女性視点)